静か。沈黙。穏やか。無欲。物持ちがいい。古いもの。清浄。理性。謙遜。慎み深さ。深い慈愛。同情。
浅はか。貪欲。吝嗇。心が狭い。妬み。差別。欲。こだわり。
ケセド―ティファレト。20番目のパス。10番目の文字。ヨッド、Y、手。乙女座。
一人の老人と一つの灯り。
隠者のカードです。
ここに来て、またガラリと雰囲気が変わりました。
今までのカードは、どちらかと言うと全体に明るさがありました。
お色も黄色を使ったカードが多かったですね。
少し暗めだと言えるのは、女司祭長と法王でしょうか。
けれど女司祭長のカードは暗いと言うよりも静か、法王のカードは暗いと言うよりも厳かと言えました。
このカードは、明らかに暗いです。色彩もハッキリしません。
背景には何も描かれておらず。微妙な色で塗りつぶされています。
足下に白い山々と、少しばかりの足場。
暗いですね。
しかし、背景に山々と空、そして足下の崖。
このキーワードには見覚えがあります。
一番最初の愚者のカードです。
あのカードにも同じような構図がありました。
こちらでは随分と控えめになっていますが。
このカードは、皇帝の年老いた姿でしょうね。
他のカードを無視して、なぜ皇帝なのかと言いますと、このカードは全てを捨てているからです。
年老いた姿の後ろには、長い人生があったはずです。
その中には喜びも悲しみも、栄光も挫折も、名誉も恥辱も、たくさんのものが詰まっているでしょう。
それら全てを捨てて、一人灯りを共に歩いてゆく姿。
これは全てを手に入れて、そして全てを捨てた人間の姿です。
だから皇帝でなくてはなりません。
皇帝はこの世を我が物にしようと邁進する姿です。
そこからスッポリと過程と達成と栄華を通過して、最後に辿り着いたのが隠者です。
カードの背景に見える白い帽子をかぶった峰。
それはかつて皇帝が征服した峰々です。
それらを振り捨てて進んでいく先。
それは愚者が歩んだ道です。
と言う事で、原点に向かっています。原点回帰です。
極めたものが最後に求めたものは、始まりの一点です。
しかし、それでもこのカードは愚者ではありません。愚者にはなれません。
なぜなら隠者は年老いているから。
未来が待ち受ける若者ではありません。人生を切り開く力は失いました。俗世の栄華を望む欲も消えています。
多くのものを見、多くのものを聞いてきました。
だから無垢たりえないのです。
それでも到達できるかどうか、過去に進んだ道を思い出せるかどうか、
わからないままに最初の一点を目指して歩いていく姿です。
04/06/19
豊かな土壌を抱えながらも、慎み深く最低限の糧で満足する。
情け深く慎み深く愛情深く、感謝する事を忘れない。
とりあえず手を合わせて拝みたくなる御仁でしょうか。
ある意味、法王に近いですね。法王が引退すると隠者になりそうな。
法王は拡大していきましたが、隠者は拡大しません。
隠者は今あるものだけを持っていて、それ以上に広げては行かないでしょう。
でも増えては行きそうですね。
例えば図書館があって、どんどん蔵書は増やすけれど、図書館の建物自体を拡張工事したりはしない感じでしょうか。
しかし、増えると言っても法王のように無差別ではなく、自分の研究対象のものをコツコツ集めるとか、
誰かが寄付してくれるのを待つとか、自分で地道に増やすとか、そう言う目立たない静かなものです。
それで、誰かが貸してとお願いすれば、快く貸してあげます。隠者も心が広いですね。
ですがこのカードも世俗的な観点から見ると、あまり良いとは言えないかも知れません。
例えば恋愛とか仕事で成功したいとか言う場合は、隠者のカードは大人しすぎるし、無欲すぎるでしょう。
生涯かけての研究やら学問では良さそうなカードでしょうが。
でも金銭や社会的成功を問わない仕事や、結婚した後の関係という面から見ると、割と良いかも知れません。
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