不安。疑惑。暗中模索。不透明。見通しの悪さ。渇望。恐れ。願い。
一筋の光明。誤解が解ける。方向転換。真実に気づく。嘘を見抜く。
ネツァク―マルクト。29番目のパス。19番目の文字。クォフ、Q、後頭部。魚座。
犬の遠吠え、水辺に潜むザリガニ、そして闇夜を照らす月。月のカードです。
このカードも一般的には、あまり好まれないカードの一つでしょう。
不安、迷い、疑い、そうした精神的なマイナス面を表すカードだと言われがちです。
確かに、カードを見てもあまり明るい絵ではありませんね。
天体がモチーフになっているのは星と同じですが、月のカードには落ち着かない不安定さがあります。
三日月の中の顔は全てを拒否し、苦悩するかのように目を閉じています。
その月からはハラハラと光の雫がこぼれ落ちています。
全てを拒否する月に向かって吠える、二匹の犬。その背後からはザリガニがゾロリと這い上がろうとしています。
でも絵をよく見てみますと、ザリガニは泉から這い上がろうとしていますね。
では、この泉はどこに繋がっているのでしょう?
月に描かれた泉は、星で描かれた泉と同じなのかも知れません。
濁った世界に投じられ続ける波紋。新しく吹いてくる風。
そうやって生まれ変わろうとしていた世界そのものではないでしょうか。
けれど、このカードには星に描かれていた女性がいません。泉に希望を降り注いではいません。
そこからは一匹のザリガニがはい出してきているだけです。
このザリガニこそが、泉の奥の住人、すなわち我々なのかも知れません。
見慣れた世界、勝手知る環境、そうした惰性と情けと繋がりで維持された世界に生きる住人。
しかし、ザリガニはそこから出てきました。なぜでしょう?
ひょっとしたら不審に思ったのかも知れませんね。
今まで降り注いでいた優しい水野流れ。
それが絶えて久しくなった頃、何が起こっているのかを知りたくて、泉から上がってきたのかも知れません。
その彼が見たものは、暗い世界を照らす無言の月、吠え続ける犬。
犬も、同じなのかも知れません。
主人に忠実に使える家畜。それは社会に忠実に使える我々にも通じます。
決死の思いで浮かび上がった世界でも、泉の下の世界と同じような決まり事で動いていたのでしょう。
犬は吠えます。何度でも吠えます。けれど月は答えません。ただ光の雫を振らせます。
でも絵をよく見てみると、それだけではありませんね。
絵の奥には二つの建物があります。どこにも入口がなく、出口もない建物。
入る事も出る事も適わない建物。小さな明かり取りだけがついた建物。
月と同じように我々に背を向けた建物の間に、細い細い道が一本続いています。
絵の奥の世界には、月の光が届きません。そこは暗闇に閉ざされ、薄闇一色に塗りつぶされています。
だけれど、その中に一筋だけ月の明かりと同じ光の筋が続いています。
月は答えません。振り向きもしません。
それでも月が降らせ続ける雫は、遙か彼方へと続く道を示しています。
ザリガニは気づくでしょうか?犬たちは気づくでしょうか?貴方は気づきますか?
04/10/02
星は希望とか夢のカードでしたが、このカードもある意味、願いのカードです。
願って願って願っているのだけれど叶うのかどうかわからない、
そんな願いにつきまといがちな不安のカードですね。
例えば、ものすごく叶って欲しい夢があるとか、どうしてもやりたい事があったとしましょう。
しかし今の段階では、それがどう転ぶのか皆目見当が付かない。
まだ判断出来る状態ではないのかも知れないし、結論が出るには時間が刈るのかも知れない。
だったら心配ばかりしていないで他の事でもして気分転換したり、
気を紛らわせるように別の事に没頭したらどうだろう?と思えますけれど、
それは第三者だから出来る判断なんですよね。
いま正にどうしようどうしようと一つの事で頭がいっぱいになっている人に言ってみたところで、
「それが出来ないから困ってる」と返されるのが落ちでしょう。
ですが、やっぱりその提案は正しいんだろうと思います。
どうしようどうしようと不安で落ち着かないのも、結局自分で自分の不安を増幅しているからです。
だったらそれを解消するにも、結局自分で自分の不安を打ち消してあげるしかありません。
他人にはどうにも出来ません。誰かに助けてもらう事は不可能です。
人の心の中の問題を、第三者がどうこうするのは無理ですから。
誰かに何か言われて立ち直ったり、何かのキッカケで考え方が変わったとしても、
それはあくまで一つのキッカケに過ぎなかっただけで、
当の本人が頭を切り換える事が出来たから、迷いから脱出出来るんでしょう。
このカードには根気強く一つの事を続ける粘り強さはあるのに、
その客観的に物事を見たり頭を切り換えると言う要素がない為に混迷してしまうようです。
例えばいま見ているディスプレイに顔をグッと近づけて1ドットだけに集中して見つめた状態で、
このページの文章をぜんぶ読む事が出来るでしょうか?(実際に試すと目が痛くなるので注意)
集中している1ドットは見えても、その周りが見えなくなってしまいますね。
だったら顔をディスプレイから離せばいいだけなのですが、このカードの場合は集中力と粘り強さで、
目が痛くなってるのにそれを止めずに、ずーっと1ドットを見つめているような状態ですね。
画面を見るのを止めるのではなく、
顔をディスプレイにくっつけて1ドットに集中するのを止めればいいだけなんですが、
このカードの場合は顔を画面から離してしまうとディスプレイを見れなくなってしまうんじゃないか、
止めた途端に文章が消えるんじゃないかと自分で自分を追い込んで、
その状態から抜けられないように足枷をはめてしまいます。
でも、やっぱり自分ではめた足枷を外す鍵は、自分の中にしかないんですよね。
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